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#017「フリーエージェント制度成立に向けて~フラッド編~」(1969)

フィリーズへの移籍を拒んだカート・フラッド。1969年シーズン後、カージナルスはカート・フラッドに対してフィリーズへの交換トレードが成立したと通告。4対4の複数メンバーによる交換トレードであった。しかし、この通告に対し、フラッド自身はまるで商品のように取り扱われ、人間として扱われていないことに反発。これが「カート・フラッド事件」と呼ばれ、選手がフリーエージェント制度を手にするひとつのきっかけになったのである。

フラッドはカージナルスでキャリアの大半を過ごした。1958年からカージナルスの外野の一角を手にしたフラッドは、その快足でチームの勝利に大きく貢献したのである。1960年代のカージナルスは3度のリーグ優勝、2度の世界一と常勝軍団であったが、その中でフラッドは打率3割を6度も記録するなどチームに欠かせない選手だった。センターの守備に関してはウイリー・メイズよりも上という声もあったのである。移籍を通告された段階のフラッドはまだ31歳と若かった。

カージナルスとしては自チームの支配下選手を交換しただけでしかなく、それまではそれが当たり前だったのである。しかし、すでにセントルイスの街に根を下ろしていたフラッドにとっては単純に受け入れられなかった。また、黒人であるフラッドはマイナー時代を過ごした1950年代、人種差別も経験していることもあり、それまでの常識をそのまま受け止められなかったのではないか、という見方もある(しかも移籍先のフィラデルフィアは人種差別が激しいことをフラッドは知っていたのである)。

そのフラッドはこのトレードは不当であると訴え、告訴したのは1970年1月のことである。焦点は保留選手条項の独占禁止法違反というものである。長い歴史を持つメジャーリーグでは同内容を焦点として最高裁まで争った経緯があり、1922年のフェデラルリーグ事件、1953年のジョージ・トゥールソン訴訟にて、独占禁止法適用外となる判決を手にしている(ジョージ・トゥールソンはメジャー級の力がありながらも、ヤンキース傘下のマイナーで飼い殺されたことから訴訟を起こしたという)。フラッドの訴えはこの系譜に並ぶものとなる。これまでの判決は独占禁止法適用外という判決が出たが、その根拠は乏しいものであり、フラッド訴訟の判決には注目が集まった。

結果として最高裁まで争った結果、フラッドの訴えは棄却された。しかし、世論はフラッド側についたのである。フラッド自身は1970年シーズンは全くプレーせずに過ごした。1971年にセネタースで現役復帰するも、約1年半のブランクを埋めることは出来ず、わずか13試合に出場しただけで引退を決意。後にフリーエージェント制度が制定され、多くの選手が大金を手にすることになるのだが、フラッド自身は大金を手にすることはなかった。しかし、メジャーリーグの歴史に風穴を開けた勇気ある行動は価値あることだったといえる。

<written by Kenji@webmaster>

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